会社を設立するときには、会社名や所在地、資本金などと一緒に「決算月」も決めることになります。

このとき、「会社なんだから3月決算でいいのでは?」「個人事業の確定申告が12月締めだったから、法人も12月でいいかな」と決めてしまう方もいますが、会社の決算月は3月や12月である必要はありません。

実際には、会社を設立する月、繁忙期、売上が入金される時期、役員報酬を見直したい時期などを考えて決めた方が、その後の経理や資金繰りは楽になります。

会社設立のご相談を受ける際にも、私は「何月決算にしたいですか?」だけではなく、「いつ設立する予定か」「忙しい時期はいつか」「売上代金はいつ入ってくるか」まで確認して決算月を考えるようにしています。

この記事では、会社設立時の決算月をどう決めればいいのか、公認会計士の立場から具体例を交えて解説します。

会社設立時の決算月は何月でもいい

会社の決算月は、必ず3月にしなければならないわけではありません。3月、6月、9月、12月はもちろん、5月や8月などを決算月にすることもできます。

法務省が公開している株式会社の定款例でも事業年度を定款で定める形になっており、最初の事業年度についても「会社成立の日から○年○月末日まで」と設定する形式になっています。

例えば2026年10月15日に会社を設立する場合、9月30日を決算日にすれば、

2026年10月15日~2027年9月30日

が第1期になります。

一方、12月31日を決算日にすると、

2026年10月15日~2026年12月31日

で、設立からわずか2か月半ほどで最初の決算を迎えます。

どちらも決算月として設定できますが、特別な理由がないのであれば、設立してすぐに決算を迎えるより、第1期をある程度長く取った方が会社を立ち上げる側としては動きやすいことが多いです。

結論|迷ったら「設立月の前月」をまず候補にする

特に事情がない小規模法人であれば、まず「会社を設立する月の前月」を決算月の候補にしてみると分かりやすいです。

例えば次のようになります。

会社設立月決算月の候補第1期のイメージ
2月設立1月決算約1年間
4月設立3月決算約1年間
7月設立6月決算約1年間
10月設立9月決算約1年間
12月設立11月決算約1年間

第1期を長く取れば、会社を設立してからすぐ決算・法人税申告という事態を避けやすくなります。

例えば10月に会社を設立して12月決算にすると、銀行口座を開設し、会計ソフトを設定し、請求書を発行し始めたと思ったら、すぐに12月末で帳簿を締めることになります。

その後、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内に法人税の確定申告を行います。つまり12月決算なら、通常は2月末ごろまでに最初の法人税申告をすることになります。

設立直後は本業だけでも忙しいため、特に理由がなければ第1期を極端に短くする必要はないでしょう。

ただし、何でも「設立月の前月」にすればいいわけではありません。次のポイントも見て決めます。

1.会社の繁忙期に決算をぶつけない

私が決算月を考えるときに、まず確認するのが会社の繁忙期です。

決算月になると、通常の経理に加えて売掛金・買掛金の確認、在庫確認、未払費用の整理、固定資産の確認などが必要になります。

例えば12月が一年で最も忙しいEC事業者が、なんとなく12月決算にするとどうなるでしょうか。

クリスマスや年末商戦で注文が増えている時期に、在庫を確認し、売上や仕入を締め、未入金の売掛金まで確認することになります。

この会社であれば、12月決算にこだわらず、繁忙期が落ち着いた後の2月や3月などを候補にする方が実務上は処理しやすい場合があります。

建設業でも同じです。年度末の3月に工事が集中する会社が3月決算にすると、現場と決算作業が同時に忙しくなることがあります。

「他社が3月だから」ではなく、自社が一年の中でいつ忙しいかを先に見た方がいいでしょう。

2.決算月だけでなく「税金を払う月」まで考える

意外と見落とされるのが、決算月の約2か月後に納税があることです。

法人税の確定申告・納付は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。例えば3月決算なら5月、9月決算なら11月が申告・納付時期になります。

ここで重要なのは、「売上が多い月」と「会社にお金がある月」が必ずしも同じではないことです。

例えば3月に大きな仕事を完了して売上1,000万円を計上しても、取引先からの入金が5月末なら、3月時点では現金が入っていません。

さらに5月には法人税などの納税もあります。

売上は立っているのに現金がまだ十分に入っていない、という状態で税金の支払いが重なる可能性があります。

決算月を決めるときは、

「いつ売上が立つか」

だけではなく、

「その売上代金がいつ入金されるか」

まで見ておくと、資金繰りの面でも決めやすくなります。

3.役員報酬を見直す時期も決算月で変わる

中小企業の会社設立で、決算月と意外に関係するのが役員報酬です。

役員報酬を法人税の計算上、定期同額給与として損金算入する場合、通常の報酬改定は事業年度開始から3か月以内に行うことが基本になります。

例えば9月決算の会社なら、新しい事業年度は10月から始まります。

そのため、

10月
11月
12月

あたりが役員報酬を見直す時期になります。

一方で3月決算なら、新年度は4月からですので、4~6月ごろに役員報酬を検討することになります。

例えば毎年1~2月にならないと翌年度の売上見込みが見えてこない会社なのに、9月決算にすると、10~12月の段階で翌期の役員報酬を決める必要が出てきます。

もちろん例外的な改定が認められるケースもありますが、会社設立時に最初から事業サイクルと役員報酬の見直し時期を合わせておくと、その後の運営はしやすくなります。

4.在庫が多い会社は棚卸しの時期も考える

小売業、卸売業、製造業など在庫を持つ会社では、決算月に棚卸しを行うことになります。

そのため、「一年で最も商品が多い月」を決算月にすると、棚卸し作業が大変になることがあります。

例えば年末商戦に向けて11月末に大量の商品を仕入れる会社の場合、11月決算にすると在庫が最も多い状態で棚卸しをする可能性があります。

逆に1月になると商品がかなり減る会社なら、1月末を決算にした方が実地棚卸しはやりやすいかもしれません。

これは業種によってかなり差が出ます。

サービス業のようにほとんど在庫がない会社なら気にする必要はありませんが、商品を扱う会社では「いつ在庫が一番少ないか」も決算月を決める材料になります。

5.「最初の2年間は消費税がかからない」だけで決算月を決めない

会社設立時の決算月について調べると、消費税との関係がよく出てきます。

確かに、新しく設立された法人は第1期・第2期に基準期間がないため、原則として消費税の納税義務が免除される仕組みがあります。

しかし、これは「会社を作れば必ず2年間消費税が免除される」という意味ではありません。

例えば、期首の資本金が1,000万円以上の新設法人は原則として免税にならないほか、第2期では特定期間の売上高等によって課税事業者となる場合があります。また、インボイス発行事業者として登録した法人も、基準期間がなくても消費税の申告・納税が必要です。

そのため、

「第1期を11か月にすれば消費税が得」

「決算月をこの月にすれば2年間免税」

といった情報だけを見て決算月を決めるのはおすすめしません。

資本金、売上規模、インボイス登録の必要性、取引先が法人か個人かなどを含めて判断する必要があります。

特にBtoBの会社では、取引先からインボイス登録を求められるケースもありますので、単純に免税期間だけを長くすればいいとは限りません。

6.第1期を短くしすぎると税務手続の期限も早くなる

設立後すぐに決算を迎える場合、申告だけでなく設立時の税務手続にも注意が必要です。

代表的なのが「青色申告の承認申請書」です。

設立第1期から青色申告を行う場合、原則として「設立の日から3か月を経過した日」と「第1期の事業年度終了日」のいずれか早い日の前日までが提出期限になります。

例えば10月15日に会社を設立して、10月31日を決算日にしてしまうと、第1期が非常に短くなります。

この場合、「会社を作ったばかりだから税務届出はあとでまとめてやればいい」と考えていると、思っていたより早く期限が来る可能性があります。

決算月を早く設定すること自体が悪いわけではありませんが、第1期を短くするなら、会社設立後の税務手続もすぐ進める必要があります。

具体例|私ならこう考える

決算月には「全会社共通の正解」はありません。

実際には、次のように会社ごとに考えます。

10月設立のWeb制作会社

社員数名、在庫なし、毎月の売上も比較的安定している会社を想定します。

この場合、特に繁忙期がなければ9月決算をまず候補にします。

10月に設立して翌年9月末を決算日にすれば、第1期を長く取れます。在庫もないため棚卸し時期を気にする必要もあまりありません。

特別な理由がなければ、こういう会社は比較的シンプルに決められます。

10月設立・12月が繁忙期のEC会社

同じ10月設立でも、12月が一年で最も忙しいEC会社なら少し変わります。

単純に第1期を長くするだけなら9月決算ですが、商品の仕入れや在庫の動きまで考えて、繁忙期から十分離れた月を選びます。

この場合は9月決算でも問題がない可能性が高いですが、会社によっては1~3月など、年末商戦が完全に落ち着いて在庫が減った時期を候補にすることもあります。

「何月設立か」だけではなく、実際の商売の流れを見るわけです。

4月設立・年度末に売上が集中する会社

4月設立なら、単純に考えると翌年3月決算が分かりやすいです。

ただ、公共関係の仕事などで2~3月に売上や業務が集中する会社なら、3月決算が必ずしも使いやすいとは限りません。

3月まで本業で忙しく、そのまま決算作業に入り、5月に申告・納税という流れになります。

こういう会社なら、6月や9月など、繁忙期から少し離した決算月も検討します。

会社設立時の決算月でよくある失敗

会社設立時に特に避けたいのは、次のような決め方です。

「会社は普通3月決算だから3月にする」

「個人事業が12月締めだったから12月にする」

「消費税が得になると聞いたからその月にする」

「設立を依頼した業者から聞かれたので、その場で適当に決める」

決算月は後から変更することもできますが、一度会社を動かし始めると、会計ソフト、税務届出、予算管理、役員報酬の見直し時期などにも関係してきます。

最初に10分、20分でも会社の一年の流れを考えて決めておいた方が、後から変更するより楽です。

決算月は後から変更できる?

決算月は、会社設立後に変更することもできます。

ただし、事業年度を変更した場合は税務上の届出も必要になります。国税庁の異動届出書にも「事業年度を変更した場合」の記載欄があり、異動後は速やかに届け出ることとされています。e-Taxでも事業年度変更の届出に対応しています。

例えば3月決算を9月決算へ変更することはできますが、その変更年度だけ通常より短い事業年度が発生することがあります。

そのため、「後で変えればいい」と考えるより、会社設立時にある程度考えて決めておく方が無難です。

会社設立時の決算月を決めるチェックポイント

迷ったら、最低でも次の5つを確認してみてください。

確認すること見るポイント
設立月第1期が極端に短くならないか
繁忙期本業が忙しい時期と決算が重ならないか
資金繰り決算の約2か月後に納税資金を用意できるか
役員報酬毎年いつ頃、翌期の報酬を決めたいか
在庫棚卸しが大変な時期と重ならないか

この5つを見たうえで問題がなければ、「設立月の前月」を決算月にするのは分かりやすい選択肢です。

反対に、繁忙期や資金繰りなどで問題があるなら、無理に第1期を長くするより、自社の事業サイクルを優先した方がいいでしょう。

よくある質問

会社設立時は3月決算にした方がいいですか?

3月決算にする必要はありません。会社の繁忙期、設立月、資金繰りなどを考えて決めれば問題ありません。

4月に設立する会社であれば3月決算は第1期を長く取りやすいため自然ですが、10月設立の会社がわざわざ翌年3月決算にすると、第1期は約半年になります。

「3月だから」という理由だけで選ぶ必要はありません。

12月決算は分かりやすいのでおすすめですか?

暦年と同じなので分かりやすいというメリットはありますが、会社によっては年末調整や年末の繁忙期と重なります。

特に小売・EC・飲食など年末が忙しい業種では、12月決算が本当に使いやすいかは考えた方がいいでしょう。

決算月は月末にした方がいいですか?

通常は月末を決算日にする方が管理しやすいでしょう。

銀行明細、給与、請求書、売掛金・買掛金など、多くの取引が月単位で管理されているためです。

特別な事情がなければ、「9月30日」「12月31日」のように月末を決算日とする形が分かりやすいです。

決算月を税理士や会計事務所に相談してもいいですか?

むしろ会社設立前に相談しておくことをおすすめします。

決算月だけを見るのではなく、資本金、役員報酬、消費税、インボイス、会計ソフトなどを一緒に考えられるためです。

会社設立後に税務上の条件を知って変更するより、設立前に全体を見ながら決めた方が手間も少なくなります。

まとめ|決算月は「何月が得か」ではなく会社の一年から決める

会社設立時の決算月には、「この月にすれば必ず得」という正解はありません。

特に事情がなければ、設立月の前月を決算月にして第1期を長く取る方法は分かりやすいですが、繁忙期、納税時期の資金繰り、役員報酬の見直し時期、在庫などによっては別の月を選んだ方がいいケースもあります。

会社設立時には、決算月だけでなく、資本金、役員報酬、会計ソフト、インボイス登録など、その後の税務・経理に影響する事項をまとめて決める必要があります。

Context会計事務所では、会社設立だけを行って終わるのではなく、設立後の会計や経理まで考えた会社設立・法人化のサポートを行っています。

「自分の場合は何月決算がいいのか」「資本金や役員報酬も含めて決めたい」という場合は、会社を設立する前の段階からご相談いただけます。

著者情報

早川覚
早川覚公認会計士・Context会計事務所代表
公認会計士、Context会計事務所・株式会社ContextJapan代表として、会計ソフト導入支援、コンサルを行っている。その他、法人化、バックオフィス整備等、経営者の裏方業務を専門としている。