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当会計事務所は会計ソフト導入支援コンサルタントを行っていますので、「会計ソフトを導入・変更する時期はいつが良いの?」この様なご質問を受けることが多いです。

それでは【会計ソフトを導入・変更する時期はいつが良いの?】について「最適な導入・変更時期」「導入・変更時の注意点」にわけて解説していきますね。

企業について解説した後、個人事業主の方について解説します。

【法人・企業向け】会計ソフトの最適な導入・変更時期について

まずは、法人・企業の方向けに会計ソフトの導入のタイミングについて解説いたします。

企業にとって、会計ソフトの導入・変更時期は非常に重要です。

一般的に、企業が会計ソフトを導入・変更する時期としては、以下のようなタイミングが最適と考えています。

  1. 決算期の終了直後
  2. 事業開始時
  3. 法改正のタイミング
  4. 経営環境の変化時
  5. サポート終了

以下、詳しく解説していきます。

①決算期の終了直後

決算が終わった直後は、新しい会計年度の始まりです。

このタイミングで新しい会計ソフトを導入することで、年間を通じて一貫した管理が可能となります。

また、過去のデータが確定しているため、移行作業もスムーズに行えます。

決算期の終了直後にクラウド会計ソフトを導入した企業からは経理業務の効率化が図られたとの声をいただくこともあります。

②事業開始時

新規事業を開始する際には、最初から適切な会計ソフトを導入することが重要です。

これにより、初めから正確な帳簿をつけることができ、経理業務を効率的に進めることができます。

加えて、事業開始時に会計ソフトを導入しておくことによって、デジタル化の準備が整い、後々経費精算システムとの連携や自動仕訳といった業務効率化につながる場合も多々あります。

③法改正のタイミング

税制や会計基準の改正が行われると、それに対応するための会計ソフトのアップデートが必要になります。

そのため、法改正のタイミングで新しいソフトを導入する企業も多いです。

例えば、改正電子帳簿保存法により、請求書や領収書などの取引情報を電子データで保存することが義務付けられました。これまでは紙での保存が認められていましたが、今後は電子データとして保存し、適切な管理が求められます。

メールで受領した請求書のPDFファイルや、インターネットからダウンロードした領収書のデータも対象となり、従来のソフトでは対応できなくなることもあります。

会計ソフトの変更を余儀なくされる場合もあります。

その他、インボイス制度も従来の会計ソフトでは、管理が複雑となり、会計ソフトの変更・導入を余儀なくされるケースもあります。

勘定奉行で有名な株式会社オービックビジネスコンサルタント様(以下、OBC様)でも言われています。
(参考記事:会計システムの役割が変わる!? 改正電子帳簿保存法・インボイス制度が与える経理業務への影響とこれからのシステム選びのポイントhttps://www.obc.co.jp/360/list/post192

④経営環境の変化時

企業が急成長したり、新しい事業部門を立ち上げたりする際には、現行の会計ソフトでは対応できない場合があります。

そのため、経営環境が変化するタイミングで会計ソフトを見直すことが求められます。

こちらはOBC様の記事の引用ですが

「企業規模が大きくなると会計データも大容量化していくため、その情報を自由に分析・活用できることの重要性がさらに増すことになります。また、複数の子会社や関連会社などを持つグループ企業であれば、同じ会計システムを共用するシェアドサービスの運用が効果的かもしれません。IPO検討企業にとっては内部統制の整備・運用に役立つ機能が、そしてIFRSの任意適用を目指す企業にとっては複数基準への対応機能などが重要視されるでしょう。」

(引用記事:ここが重要!会計システムを選ぶために押さえておきたい3つのポイントhttps://www.obc.co.jp/360/list/post04

と言われています。

経営環境の変化に対応するために会計ソフトを変更した結果、業務プロセスが改善されたという声もあります。

⑤サポート終了

現行の会計ソフトのサポートが終了するタイミングで、新しいソフトへの移行が必要になります。サポートが終了すると、不具合が生じても対応が受けられなくなるため、早めの対応が求められます。サポート終了前に新しいソフトに移行することで、「移行期間中のリスクを最小限に抑えることができました」というお客様もいます。

【個人事業向け】会計ソフト導入のタイミング

上述した時期に加え個人事業主の方は、以下のタイミングでの導入・変更も適していると考えています。

  1. 開業時
  2. 1月
  3. 法人化する時
  4. 機能拡張したい時

以下、詳しく見ていきましょう。

①開業時

開業と同時に会計ソフトを導入することで、初年度から正確な会計処理を行うことができます。

特に青色申告を選択する場合、適切な帳簿管理(複式簿記)が求められるため、会計ソフトの利用が非常に有効です。

ですが、会計の専門知識がほとんどない方もいらっしゃいます。

弥生株式会社様の導入事例には次の声があります。

「私は会計知識ゼロからの確定申告だったのですが、弥生のホームページで公開されている無料のPDFデータ『はじめての青色申告』を参考に、確定申告作業を進めました。最初は不慣れなため理解するのに時間がかかりましたが、『やよいの青色申告 オンライン』はとてもシンプルな使い勝手だと感じました。

確定申告書類の作成はステップに沿って入力していくだけで、自動的に書類が作成されていく感じでかんたんにできました。『やよいの青色申告 オンライン』を使っていなければ、全然できなかったんじゃないかと思います」

(引用記事:手入力がほとんどいらないので、忙しい個人事業主におすすめです。https://www.yayoi-kk.co.jp/jirei/detail/90/

1月

個人事業の場合、会計年度の始まりは1月です。1月に導入することで、年間を通じた経理業務の効率化が図れます。既存の事業で白色申告から青色申告に切り替える場合も、1月に会計ソフトを導入するのが理想的です。

これにより、年度内の帳簿が一貫して管理され、税務申告の際にもスムーズに対応できます。「年初に会計ソフトを導入しておいてよかったよ~。」個人事業主の方からは本当によくこの声をいただきます。

法人化する時

個人事業主から法人化する際には、会計処理や税務処理が複雑化するため、法人向けの会計ソフトに変更する必要があります。法人化に伴う会計ソフトの変更は、新しい財務諸表や税務申告に対応するために不可欠です。

関連記事:個人事業主向け会計ソフトを導入するメリット・デメリット

機能拡張したい時

新しい機能や分析ツールが必要になった場合にも、会計ソフトの変更が検討されます。

例えば、キャッシュフローの管理や取引先の分析機能を強化したい場合など、より充実した機能を持つソフトへの移行が効果的です。

導入・変更時の注意点

また、会計ソフトを導入・変更するためには事前の準備も必要になりますよね。

ここを皆さん軽く考えがちなのですが、実際に導入・変更する際には必須項目になります。導入・変更時から逆算して以下の対応も含め無理のないスケジュールを設定し実行することが望ましいです。

①データのバックアップおよび移行

会計ソフトの導入・変更時は、業務に支障が出ないようにスケジュールを立てることが重要です。

具体的には、会計ソフトの変更前に、データの紛失や破損を防ぐことを目的に現在使用している会計ソフトのデータのバックアップを取る必要があります。

その後、旧ソフトから新ソフトへのデータ移行を実行します。

最近の会計ソフトは、現在使用している会計ソフトのデータをCSV形式で取り込む機能を提供していることが多いです。

一方で、新しい会計ソフトと現在しているソフトに互換性がなく、特別な処理が必要になる場合もありますので、導入・変更時には新旧ソフトの互換性を確認しておくことが望ましいです。

②移行後の検証

データ移行が完了したら、新しい会計ソフトにデータが正確に反映されているかを確認します。

特に、残高試算表や貸借対照表の数値が正しいかをチェックします。

MoneyForwardクラウド会計ではソフト導入後のデータ移行の検証方法として次の方法を推奨しています。

「「残高試算表」画面の期末残高と移行元ソフトの期末残高が一致しているかを確認してください。このとき、勘定科目ごとに1つずつ期末残高を突合していくよりも、「資産の部」「負債の部」「純資産の部」といった合計金額単位で突合し、差異がある部についてのみ勘定科目単位で突合していくと、効率的に確認が可能です。クラウド会計・確定申告の期末残高と移行元のソフトの期末残高が一致していない場合、「総勘定元帳」や「補助元帳」で対象の科目の仕訳を確認し、残高不一致の原因を調べてください。」

(引用記事:マネーフォワード クラウド会計使い方ガイドhttps://biz.moneyforward.com/support/account/guide/date02/account-migration.html#010

この様に、移行後のデータが正しいことを確認することが新しい会計ソフトの土台になりますので、実施することを推奨します。

③トレーニングとサポート

新しい会計ソフトの操作方法について、経理担当者に対するトレーニングが必要になります。

トレーニングが不十分だと決算の締めに間に合わないなど月次・年次での業務に支障をきたしてしまうことに繋がりますので注意が必要です。また、ソフトウェアのサポート体制を確認し、必要な時に迅速に対応できるようにしておくことで安心がぐっと増します。

尚、多くの企業が会計ソフトの導入・変更の事前準備を適切に行わなかったために大きな苦労を経験しています。

例えば、アメリカを代表するチョコレートおよび製菓会社であるHershey's社では適切なテストやデータ移行を行わず、また、忙しいハロウィーンシーズンにシステムを切り替えたため、多大な損失を被りました。

その結果、膨大なコストをかけて実施したプロジェクトが失敗に終わり、1,000万ドル以上の損失を出しました。(参考記事:https://pemeco.com/a-case-study-on-hersheys-erp-implementation-failure-the-importance-of-testing-and-scheduling/

また、Nike社では会計ソフトの移行を急ぎすぎたために重大なバグに気づかずシステム障害が発生し、約5億ドルの損失を被りました。

同時に計画段階での準備不足や従業員への適切なトレーニングの欠如が原因で、多くの問題が生じました。その影響で当時の主力製品であったエア・ジョーダンの販売に支障をきたしたとされています。
(参考記事:https://whatfix.com/blog/failed-erp-implementation/#nike

このような失敗を避けるためには、計画段階からの徹底した準備とテスト、そして適切な移行手順の実行が不可欠です。

まとめ

これまで「会計システムの導入・変更はいつ行うのが良いのか?」について話してきましたが、改めてまとめて話をさせていただきますね。

会計ソフトの導入や変更は、企業にとって重要な意思決定の一つです。正しいタイミングで適切な会計ソフトを選び、効果的に運用することで、経理業務の効率化と正確性の向上を実現できます。

本コラムでは、会計ソフトの導入時期や変更に関する重要なポイントを解説しました。

①会計ソフトの導入時期

会計ソフトの導入時期は、企業の状況や環境に応じて柔軟に考える必要があります。決算期の終了直後や事業開始時、法改正のタイミング、経営環境の変化時、サポート終了など、適切なタイミングを見極めて繁忙期を避け導入することが重要です。これにより、経理業務の効率化と正確性を高め、企業全体の業務効率を向上させることができます。

②会計ソフトの変更時期

企業の成長や業務内容の変化に伴い、会計ソフトの変更が必要になる場合があります。適切なタイミングと方法で会計ソフトを変更することで、業務効率を維持しつつ、スムーズな移行を実現することができます。変更のタイミングや手順を理解し、ニーズに応じた選定と導入を行うことが重要です。

今後も、企業の成長とともに会計ソフトの重要性は増していくことでしょう。適切な時期に適切なソフトを選び、経理業務を最適化することで、企業の成功をサポートします。今後の経営において、会計ソフトの選定と導入は重要な要素となりますので、しっかりと計画を立て、実行に移しましょう。これから会計ソフトの導入や変更を検討している企業の皆様に、このコラムが少しでもお役に立つと幸いです。

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著者情報

早川覚
早川覚公認会計士・Context会計事務所代表
Context会計事務所・株式会社ContextJapan代表として、会計ソフト導入支援、コンサルを行っている。その他、法人化、バックオフィス整備等、経営者の裏方業務を専門としている。