最近、個人や法人用の会計ソフト導入の話題をよく聞くようになっています。
個人事業主やフリーランスにとっても、確定申告や最近導入されたインボイス制度との関係で、会計ソフトを導入することが必須の状況となっています。
しかし、自分の業務にあった会計ソフトをどのように選んだらよいか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
本記事では、個人事業主にもやさしい、ほんとうに必要な機能を備えた会計ソフトについて、基礎からその活用法まで丁寧に解説します。
- 1. 個人事業でも会計ソフトって必要?税務上のメリットが高い
- 2. 会計ソフト導入のメリット
- 2.1. メリット①:簿記の知識は不要
- 2.2. メリット②:税法改正にも対応できる
- 2.3. メリット③:計算ミスや数値の確認ができる
- 3. 会計ソフト導入のデメリット
- 3.1. デメリット①:ランニングコストがかかる
- 3.2. デメリット②:会計ソフト導入時の設定が難しい
- 3.3. デメリット③:ネット環境でしか利用できない
- 4. 個人事業主向け会計ソフトの選び方
- 4.1. ご紹介する会計ソフト7選
- 4.2. 飲食業向けの会計ソフト:HANJO会計がおすすめ
- 4.3. 一括支払いの会計ソフト(パッケージ型)
- 4.4. クラウド型の会計ソフト
- 4.4.1. やよいの青色申告オンライン
- 4.4.2. マネーフォワード
- 4.4.3. freee:年会費も安価なクラウド型の会計ソフト
- 5. まとめ
個人事業でも会計ソフトって必要?税務上のメリットが高い
個人事業主の方にとって、新しい会計ソフトの導入はハードルが高いですよね。
個人事業主は、毎年、確定申告を実施しています。
もちろん、確定申告を実施しなければ脱税となってしまいます。
確定申告の方法として、白色申告者の場合は、複式帳簿などの面倒な手間がかからないので、必ずしも会計ソフトの導入は必要ありません。
これに対して、青色申告では、複式帳簿やそれ以外にもさまざまな記帳業務が生じてきます。
特に、青色申告特別控除という、個人事業主にとってメリットの高い、高額の税額控除を受けるためには、複式帳簿が税務上も必須と規定されています。
会計ソフトは複式簿記で記帳する機能が優れており、簿記の知識がない方でも取り組みやすくなっています。
このため、青色申告をする個人事業主では、会計ソフトの導入はとても重要になります。
青色申告については、下記のように国税庁から帳簿の保存方法が指定されています。
参照元:記帳や帳簿等保存・青色申告/国税庁
また国税庁でもYouTubeに対応しており、青色申告、白色申告の記帳の仕方を公開しています(下記)。会計ソフト自体ではありませんが、ソフトの基本でもあり、参考になるかと存じます。
参照元:記帳・決算のしかた/国税庁
なお最近はインボイス制度も導入されており、電子帳簿自体が消費税の還元において、必須とされています。
現在、移行期間も設けられていますが、確定申告後の問合わせがあった場合は、電子帳簿での提示が必要になっています。
白色申告であっても、適切な会計ソフトの導入は業務効率を大幅にアップさせます。また白色申告者でも、取引先がしかるべく、会計ソフトでの取引を求める場合もあります。
これを避けてしまうと、当該取引から排除される場合も多く、公正取引委員会などに提起することもない訳ではありませんが、事実上、依頼先指定の会計ソフトを使用する場合が、実態として数多くあります。
会計ソフト導入のメリット
以上のように、個人事業主は、白色申告は別ですが、特別控除等を利用する場合は、会計ソフトを導入した方がよいといえます。
ここでは会計ソフト導入の3つのメリットについて、解説します。
メリット①:簿記の知識は不要
まず会計ソフト導入のメリットとして、一番大きいのは簿記の知識が不要ということです。
複式簿記の知識がなくても、確定申告時の「青色申告特別控除」の書類も簡単に作成できます(複式簿記は、青色申告での必須の知識です)。
個人事業主やフリーランスで、簿記の知識があまりない場合でもおすすめです。
会計ソフトを利用すると、ソフト導入時の一定の慣れのための時間は必要になるものの、入力項目、特に源泉徴収の有無や、消費税の計上の有無など、業務依頼元の各種要望等を踏まえて、正確な帳簿を作ることができます。
メリット②:税法改正にも対応できる
次に、会計ソフト導入は、さまざまな税法上の改正に対して正確な情報を提供してくれることが上げられます。
日本では他国と比べても、税制改正が頻繁に行われますので、大手企業でも対応に遅れが出る場合もあるくらいです。
個人事業主にとっては、非常にハードルも高いといえるでしょう。
適正な会計ソフトでは、定期的に税制改正がアップデートされるため、最新の改正に合わせた計算や確定申告ができます。
たとえば以下のリンクのように、大手会計ソフトでは、最新版の改正に対応した申告が可能です。
参考:freee申告、令和4年度の法人税の税制改正に対応 新たな機能も追加提供開始
メリット③:計算ミスや数値の確認ができる
また会計ソフト導入は、当たり前ではありますが、計算ミスなどが大幅に低下します。
電卓を片手にして、時間をかけて数値計算を行うといった時間やコストの低減もできます。
会計ソフトには、バックアップ機能やエラーチェックなどが自動で実施されるので、暗安心です。当然、数値入力や計算の自動化にも対応しており、個人事業主などの時間があまりない人には有益なツールとなります。
会計ソフト導入のデメリット
ここからは会計ソフト導入のデメリットについても、3つ説明します。
デメリット①:ランニングコストがかかる
会計ソフトの導入には、初期費用や毎月の料金がかかるのが一番の難点です。
特に個人事業主は、事業支出に対して、ソフト費用の割合いが高いので、注意が必要です。
ランニングコストを抑えるためには、会計ソフトの導入元の料金プランと、自身の利用頻度をこまめに照らし合わせて、最適なプランを導入することが必要です。
会計ソフトの料金相場は月額1,078円~4,378円・単体製品16,500円~が相場
参考:会計ソフトの料金相場と選び方【各社徹底比較】
デメリット②:会計ソフト導入時の設定が難しい
ネットからのソフト導入に詳しい方は別として、会計ソフトのPC設置時の時間や手間がかかるという問題があります。
クラウド会計ソフトは事業用で利用しているネットバンクと連携をすることが可能です。支払と同時に、会計ソフトに情報が飛び、自動的に記帳・仕訳をしてくれます。大変便利なのですが、連携の設定は初心者には難しい場合も多いです。
会計ソフト導入に対して、導入の際のサポートが充実していたり、自動で設定可能なソフトを選ぶとよいでしょう。
もしくは、会計士・税理士等の専門家に運用サポートをしてもらうことがおすすめです。
デメリット③:ネット環境でしか利用できない
最後に、ネット環境での業務が多いと思われますが、会計ソフトの適正な稼働環境の問題があります。通常は、PC以外の携帯・スマホでは確認は可能ですが、計算等はできない場合もあります。特にクラウド型の会計ソフトが大半ですが、この場合はインターネット上でしか、稼働しません。
参考記事:個人事業主向け会計ソフトを導入するメリット・デメリット
個人事業主向け会計ソフトの選び方
続いて、会計ソフトの選び方についてです。
個人事業主にとって、会計ソフトをどのように選んだらよいでしょうか。
飲食業、IT関連の業種などの業種毎のおすすめ。一括購入できるパッケージ型を好む人など、おすすめの会計ソフトをご紹介します。
ご紹介する会計ソフト7選
まず本記事でご紹介する、会計ソフト7選について、概要を下記にまとめました。
会計ソフトには、大きく分けて、毎月課金されるクラウド型と、一括購入が可能なインストール型(パッケージ型)があります。
記事では、主なクラウド型を4つ、主なパッケージ型を3つ選択しております。
いずれも国内で実績のある会計ソフトですので、お役に立てるかと存じます。なお前項で記載した「確定申告」と「電子帳簿法」には、全てのソフトが対応しているので安心です。
会計ソフト | 特徴 | クラウド型/インストール型の区分 | 確定申告・電帳法対応 |
free会計 | クラウド会計最大手 | クラウド型 | 両方とも対応 |
やよいオンライン | 会計事務所系大手 | クラウド型 | 両方とも対応 |
マネーフォワード | 金融サービス業大手 | クラウド型 | 両方とも対応 |
HANJO会計 | 飲食店向け特化型 | クラウド型 | 両方とも対応 |
みんなの青色申告 | パッケージ型草分け | パッケージ型 | 両方とも対応 |
勘定奉行 | 財務会計システム大手 | パッケージ型 | 両方とも対応 |
MJSかんたん申告 | 財務経営システム大手 | パッケージ型 | 両方とも対応 |
パッケージ型は、初期費用は高いですが、運用時のコストが抑えられる利点があります。これに対して、クラウド型は、運用時にもそれなりのコストがかかるのが欠点です。
このため、自身の業務にあった会計ソフトを選択するのがよい、と思われます。
特に、確定申告との絡みで、一括支払いを選択したい場合もあるかと思います。自分にあった会計ソフトを選ぶことをおすすめします。
飲食業向けの会計ソフト:HANJO会計がおすすめ
個人事業主において比較的多い飲食業の人には、「HANJO会計」というソフトがあります。
「HANJO会計」は、いつもお世話になっている卓上型電子計算機大手の「カシオ計算機」が運営している、会計ソフトです。一括支払いのパッケージ型ではありませんが、2カ月間無料のプランも導入されています。
同ソフトは、飲食業に対応する各種経理業務に加えて、経営改善などの機能もそなえています。確定申告にも対応しているので、飲食店業務には適しています。インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しているでだけでなく、「お店が儲かるヒント」を自動で分析し、アドバイスしています。
同会計ソフトでは、「スマホでレシートを撮るだけで、自動的に仕訳します。クレジットカードや銀行口座経由の取引も、自動取込、自動仕訳します。」としています。
なお無料版のソフト導入プランでは、登録翌月まではほとんどの機能が無料となっています。試用してみて良ければ継続も可能ですので、一度登録してみることもおすすめです。
参照元:https://tenpo.casio.jp/service/accounting/index.html
一括支払いの会計ソフト(パッケージ型)
一括支払いは、個人事業主としては確定申告などとのからみで、メリットの大きい方法となります。
一括支払い型の会計ソフトといえば、パッケージ型のソフトです。
パッケージ型としては、「みんなの青色申告」「MJSかんたん 青色申告」「勘定奉行」などの会計ソフトがあります。
まず「みんなの青色申告」は、青色申告というように、最初から確定申告に対応したソフトです。
ソリマチ株式会社が提供するインストール型の会計ソフトが、「みんなの青色申告」で、23年間の実績を有しています。クラウド型ではないので、初期費用はかかりますが、毎月の運用費用はかかりません。
MoneyLinkというパソコンを起動するたびに、金融機関から最新データを取込む独自機能も持っています。一度インストールするだけなので、その方がコストもかからずよいという人には、おすすめのソフトです。
同社では、「自動化+サクサク動作で、青色申告もこわくない」をモットーとしており、「インストール型ソフトならではの軽い動作と、クラウドの利便性を掛け算して、圧倒的に使いやすくなったみんなの青色申告がオススメです。」としています。
参照元:みんなの青色申告
次に「MJSかんたん 青色申告」も、確定申告対応で一括支払い型のソフトです。
株式会社ミロク情報サービスが提供する、パッケージ型の会計ソフトとなっています。パッケージ型の会計ソフトの中では、比較的には割安に利用でき、30日間の無料トライアル期間があるので、その中でソフトの適性を確認することができます。
同社では、「一般的な勘定科目はあらかじめ登録されているので、科目を選んで金額を入力するだけのかんたん操作で、記帳作業ができます。入力したデータは、自動で関連資料に反映されます。」としています。
参照元:かんたん!青色申告
これらのふたつのパッケージ型ソフト以外に、「勘定奉行」という会計ソフトもあります。
財務会計システムとしては、最大手で、個人事業主向けの会計ソフトを提供しています。導入後も最新のバージョンアップも可能なため、税制改正などにも柔軟に対応可能です。
クラウド型の会計ソフト
パッケージ型のような一括支払い型の会計ソフトではありませんが、毎月の課金がOKの場合は、クラウド型の会計ソフトもおすすめです。
やよいの青色申告オンライン
まず、確定申告でも実績のある「やよいの青色申告オンライン」があります。
年会費制(毎月課金ではない)のみとなり、年27800円となりますが、初年度は無償という特典がついています。
同ソフトは、会計事務所としては、国内大手で且つ実績のある「弥生会計」事務所が提供する、クラウド会計ソフトです。
各地域にある「青色申告会」でも、本ソフトを推奨している場合も多くなっています。
「会計ソフト「弥生会計」なら、初心者でもすぐに使い始められ、帳簿付けから経営状態の確認、試算表、決算資料までかんたんに作成できます。」をモットーに、小規模法人や中小規模法人に適したソフトとして、「やよいの青色申告ソフト」などを提供しており、同ソフトでは1年間無料で試用でき、最初の取りかかりの会計作業にも最適です。
同社では、「かんたん、気軽に使えるインターネットにアクセスして利用するタイプの会計ソフトです。Macをメインで使っている方、手軽さと利便性を重視する方におすすめです。」としています。
参照元:弥生の会計ソフト
マネーフォワード
次に、金融サービス仲介業大手「マネーフォワード」があります。
年会費制と毎月課金の両方となり、年会費制では35,760円(月額換算:2980円)となり、やよいの青色申告オンラインより高くなります。なお毎月課金では、3,980円と比較的高くなります。
ただ、金融サービス仲介業大手で、またクラウド会計としても、会計ソフトで長年の実績もあります。
法人・個人事業主向けのクラウド会計を提供しており、インボイス制度や電子帳簿保存法にも対応しています。
同社では、「インターネットバンキング・クレジットカード・電子マネー・POSレジなどの様々なサービスと連携することで、日々の取引明細データが自動取得されます。」としています。
また同社調査では、クラウド会計ソフトを導入して、会計業務は約2分の1に削減できた、としています(下記:同社のアピールポイント)。
・日々の取引の入力など面倒な作業は自動化し、業務効率を大幅に改善。
・データをクラウドに集約し、経営の見える化を実現します。
参照元:クラウド会計ソフトなら「マネーフォワード クラウド」
freee:年会費も安価なクラウド型の会計ソフト
コスパを重視するのであれば、安価なクラウド型の会計ソフトとして、「freee会計」があります。
クラウド型の有利な点も活かしつつ、毎月の課金も他の大手会計ソフトに比べれば、安価となっています。
下記のような料金プランを提供しており、自分にあったプランから開始することも可能です。一番の利点は、毎月の費用が、年払いの場合「1千円」を切っていることも魅力です。
参照元:freee会計/料金プラン
同社は、クラウド会計ソフト大手で、クラウド型では国内ナンバーワンのシェアを持っています。個人事業主以外にも、多くの事業会社も利用しています。
以前pasture(現:freee 業務委託)と呼ばれたクラウド型ソフトでは、依頼元企業を中心として、個人事業主も参加できるような仕組みが構築されています。
この場合は、依頼元企業が月額使用料を払えば、個人参加の個人事業主は、当該プロジェクトでの会計処理は、無償で利用することができ、大きなメリットとなります。
同社は、下記のモットーをもとに、幅広いニーズに対応しています。今回記事でも取り上げた内容とも関連しており、クラウド会計初心者でも割合に使いやすくなっています。
- 確定申告も決算業務もまとめて効率化
- 日々の面倒な経理作業も、自動化により作業短縮。
- わかりやすい画面で、初めての方の操作も安心。
まとめ
会計ソフトについて、その基礎から応用分野、特に税制対応などを含めて、詳細に説明しました。
特に、各社の会計ソフトに関する参照元を記事内に記載しましたので、ご自身でも実際に当該ホームページを参照してみることをおすすめします。
本記事が、個人事業主のみなさまにとって、必要機能を有する会計ソフトを選択するための検討のお役に立てば幸いです。
会計ソフトについてのご不明点についてはお気軽にお問合せくださいませ。
「会計ソフト導入のタイミング」については以下の記事も参考にしてください。
会計ソフトを導入・変更する時期はいつが良いか【企業・個人事業別に解説】
この度はContext会計事務所のコラムをご覧いただきありがとうございます。 当会計事務所は会計ソフト導入支援コンサルタントを行っていますので、「会計ソフトを導入・変更する時期はいつが良いの?」この様なご質問を受けること […]
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